03-01 AIは危険? そもそもAIって何?

03-01 AIは危険? そもそもAIって何? 補足解説

あなたは、コンピューターを使って文字を入力したことがあるかもしれません。「あ」と打ち込んだら、「あ」で始まる言葉がたくさん出てきます。そして、何回も入力していると、あなたの言葉のくせを覚えてよく使う言葉を選んでくれるようになります。こういう気が利いているような機能は、AIだと呼ばれています。

AIは学習が命

実際、コンピューターの動きのどこからどこまでをAI(人工知能)と呼ぶかは決まっていません。まるでコンピューターが自分で考えて動いているように見えることをAIと呼ぶことができます。

本当にコンピューターが自分で考えて動くのでしょうか。そんなことはありません。必ず最初は、人間がソフトウェアを作って、「こういう時はこうしなさい」ということを教え込んでいます。そして、それに関係する出来事をたくさん学習させます。

自動車を運転するAIを考えてみましょう。最初は、何もないコースを運転させるソフトウェアを組み込みます。それから、周りの車とぶつからずに走る方法や、でこぼこのある所ではどうするかなど、安全運転のためにできることをたくさん学習させます。そうやって学習させていくと、安全運転をするAIになります。

このように、AIは学習させることが大事です。正しいことだけを教え込むのではなく、正しくないことを見せて、どこが間違っているかを教える、などという学習方法もあるようです。

生成AI

最近は、画像や文章を作り出す生成AI(Generative AI)が話題になっています。生成AIも、何もないところから画像や文章を生み出すのではありません。学習したことをもっともらしく組み合わせて作り出しているだけです。
ためしに、画像生成AIを使ってみます。

まず、世界中の写真を学習させてから「女の人を描きなさい」と指示を与えると、次のような画像を作り出します。写真のように見えますが、AIが作り出した画像です。

日本人の写真を中心に学習させてから「女の人を描きなさい」と指示を与えると、次のような画像を作り出します。これも、写真のように見えますが、AIが作り出した画像です。

TVアニメやコミックを中心に学習させてから「女の人を描きなさい」と指示を与えると、次のような画像を作り出します。
アニメやコミックを学習しているので、写真のような画像ではありません。

この3枚の画像からわかるように、どういうものを学習させるかで、作り出されるものが全く違ってきます。

生成AIが嫌がられる2つの理由

生成AIを便利に感じる人と、嫌う人がいます。嫌う人たちは、感情的に嫌う人もいれば、はっきりした理由があって嫌う人もいます。はっきりした理由はいくつかありますが、そのうちの2つを考えてみましょう。

生成AIが嫌がられる理由1:勝手に学習されるのが困る。

生成AIは、人間が作り出したものを学習して、それをもとに何かを作り出します。先ほどのように画像生成AIは、写真や絵を学習して、それをもとに画像を作り出します。

さて、学習に使われた写真や絵は、誰のものですか。実は、世界中の写真や絵が学習に使われています。

でも、長年自分で絵を描いてきた人にとってそれはとても嫌なことです。自分が苦労して描き方を考えてきたのに、勝手に学習されて、同じような描き方で絵を作り出されるのは、とてもつらく感じられるのでしょう。

AIの学習のことを「盗み」だとか「まね」だとかいう人もいます。

日本の法律では、AIの学習は、データ解析に当たるので認められています。それに、考えてみてください。自分で絵を描いてきた人たちは、誰の影響も受けないで絵が描けるようになったのでしょうか。そんなことはないはずです。子供のころに見た絵やTVアニメの絵や自分の目で見たものの影響を受けているはずです。人間もいろいろな方法で学習していることを忘れてはいけません。

自分で絵を描いてきた人は、自分が苦労して描いた絵よりも、それを学習したAIによって作り出される絵のほうが人気が出てしまい、自分が売れなくなってしまうことを心配しています。そんなこともないはずです。

すぐれた作品とそれを生み出すすぐれた作者は残ります。すぐれた芸術家は生成AIが登場する前から、まねする人たちに打ち勝って、今も残ってきたからです。生成AIで足りる部分もありますが、人間の創造性が必要なことはそれ以上にあります。

生成AIが嫌がられる理由2:間違ったことを平気でするのが困る。

先ほどの3枚の画像は一例にすぎませんが、生成AIは、何を学習するかで作り出されるものが変わります。

間違ったことばかり学習させれば間違ったことを平気でするようになります。まるで、生成AIは、小さな子供のようです。誰かが下品な言葉を使っていると、それを平気で使うようになります。その言葉の意味とか善悪がよくわからないからです。大人になって、子供のころ平気でしていたことを恥ずかしく感じることがあるのは、道徳心が身についてきたからです。

生成AIは、神が造ったものではないので、いつまでも成長できない子供のようです。技術は学習で上がっていきますが、作り出したものの善悪はわかりません。もちろん、使ってはいけない言葉を決めておいてそれを使わないようにすることはできます。でも、それをすり抜けたり、土台から間違った考えを学習したりしていることもあります。

ワンポイント-画像生成AIでも平気で間違ったことをする。

画像生成AIは、写真や絵を学習して、どういう画像を生成すればいいのかが何となくわかっているだけで、人間がどういうものかが本当にわかっているわけではありません。それで、手の指や足の生え方がおかしいことが良くあります。顔は数多く学習できますが、それと比べると、指や足は学習の量が少ないせいです。
この画像は、「コーヒーを飲む女性を描きなさい」という指示を与えると同時に、「bad anatomy(奇形)は禁止」という指示を与えておきました。それにもかかわらず指がおかしくなってしまいました。
誰かの顔に置き換えるように指示して、顔写真を教えれば、それが誰であろうと置き換えてしまいます。

生成AIが作り出すものは、平気で間違っていることがあるので、生成AIそのものを危険だと考える人たちがいます。
確かに、間違ったことを信じ込んでしまうのは危険です。でも、生成AIが作り出すものが、いつも間違いで危険だというわけではありません。

生成AIに限らずAIは、ただの道具です。自動車や包丁と同じです。交通事故が起きるからといって自動車が危険だというのは極端です。年長の人たちがアクセルとブレーキを踏み間違える事故が多いにもかかわらず、アクセルとブレーキの位置が危険だという意見はなかなか出ません。包丁も、人殺しの道具になるので、包丁そのものが危険だから禁止しろというのは極端です。
では、どう考えればいいのでしょうか。どんな道具も、使い方次第だということです。道具には、使っていい時と使うべきではない時があります。それから、正しい使い方と正しくない使い方があります。そしてそれを判断するのは、道具ではなく、使う人間です。AIも道具ですから、使ってはいけない時があり、正しくない使い方があります。そういうことがわかるのはAIではなく、使う人間です。

神は、人間に良心と道徳心を与えました。それに基づいて、使うべき時に、正しい使い方をすれば、AIは素晴らしい道具になります。

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